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2007年1月28日 (日)

舌切りすずめ

おじいさんの可愛がっていたスズメが、こしらえておいた洗濯糊を食べてしまった。 その事に腹を立てたばあさんが、仕置きとしてスズメの舌を切ってしまうという、あの昔話だ。
何でそんなことをするんだっ! と、このとんでもないばあさんに怒りを覚えたものだ。
そして、ばあさんのあまりの強欲ぶりに、心底呆れかえった。
こんな大人にはなりたくないと、子供心に強く思っていた。

私が小学校低学年だった頃、休日に父と母が近所の子供達や友人を誘い、遊びに連れて行ってくれたことがあった。
何かのイベントだったのだろうか、あまりよく覚えていないが、たくさんの露店が出ていた事は覚えている。

その中の1店で、私は父にねだり 『お楽しみ箱』 なるものを買ってもらったのだから。
『お楽しみ箱』 は、とてもシンプルなものだった。
中が見えないように、キッチリ包装された箱の中から、1つ選ぶだけなのだ。
店先に張られたチラシには、「うでどけいやラジオ、ぬいぐるみなどが入っています。」 と書かれてあった。
それを見た私は大興奮である。
時計なんて、大人しか着けられないモノと、思っていたからだ。
もう、狙うは時計だけである。
フと目をやると、大小2種類の箱があった。
父に聞くと、大きい方は500円、小さい方は300円との事だった。
時計しか狙っていなかった私は、「時計なんていいものは、500円のほうに入っているに違いない。」 と思い、父にお金を払ってもらった。
そこからが大変だった。
中なんて見えるわけもないのに、ジーッと箱を睨み、こっそり振ったりもした。
友人達も多少悩んでいたが、次々選んでその場を離れていく。

一人モタモタしている私を父がせかす。
置いて行かれては困るので、何とか頑張って箱を選んだ。
そして、それを大事に抱え、ベンチに腰掛けた。
いよいよ箱の中身とご対面である。
はやる心をおさえつつ、ゆっくり包装紙をはがしていく。
茶色の箱が姿を現し、私はそのフタに指をかけた。
「・・・違う」
箱の中を覗いた瞬間、私は落ち込んだ。
盛り上がっていた分、その落ち込み方は普通ではなかった。
一人ドンヨリしているそんな私の後ろから、
「すっごーいっっ!!」
と、甲高い声がする。
ノロノロと振り返った私の目に、時計を手にした友人の姿が飛び込んできた。
「あっ・・・・・」
私は知っている。 
彼女は迷うことなく300円の箱を手にしたのだ。
そんな彼女に私は、「それでいいの? トケイとかは大きい箱に入ってると思うけど・・・」 と言ったのだが、「今日、鞄持ってきてないねん。 だから小さい方。 トケイは・・・いいや。」 と笑顔で答えたのだ。

その瞬間、舌切りすずめを思い出した。
彼女は、自分の状況を考え判断し、小さいつづらを選んだ優しいおじいさん。
私は間違いなく、欲に目がくらみ、大きいつづらを奪ったイジワルばあさんである。 あんな大人には絶対になるまいと固く誓ったはずなのに、気が付けば子供ながら、この有様である。
私は、お世辞にも可愛いとは言い難い、ズングリとした灰色のネズミらしきヌイグルミを手に、呆然と立ちつくすしかなかった。

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2007年1月27日 (土)

くらげ 『冷静』 に憧れる

人間は、自分と対極にあるものを求めるものらしい。
私は冷静さを手にしようと、ずっともがき続けてきたのだが、未だ叶っていない。
自らの感情を抑えることも出来ない私。
しかも、自分の理解の域を超える出来事に遭遇すると激しく動転し、普通では考えられない結論を導き出してしまうという、とんでもない性質も持ち合わせてしまっている。
昔、こんな事があった。

それは私がまだ高校生だった頃。
自室で音楽でも聴こうとCDを選んでいた私は、一枚を取り出しそれをコンポにセットした。
そして再生したのだが・・・
スピーカーから流れてくる曲を聴いて、私は固まった。
さっき選びセットしたものではない、違う曲が鳴っているではないか。
「何だ、これは・・・」
体が冷たくなり、動けない。
それでも脳は、めまぐるしく動き、一つの結論を出した。

「・・・これは神からの、お告げかもしれないっ!」
こうなってしまったら、もう他の原因なんて考えられない、とんでもないくらいの思い込みの激しさだ。
「ちゃんと心してメッセージを受け取ろう。」
私は姿勢を正し、スピーカーをジッと見つめた。

「・・・・・・・・・・・」
1分後、私はコンポからCDを取り出した。
それも2枚・・・
分かればバカな話である。
前日に聴いていたCDを、入れっぱなしにしていたのを忘れ、その上にまた入れてしまっていたのだ。

コンポが読み取り流したのは、もちろん下にあったほうだ。

「何が神からのメッセージだっっ!」
私はセットし直したCDを聴きながら、バカな自分にツッコミ続けた。

大人になれば、なんとかなるかと思っていたが、今も同じような事をしでかしてしまう自分が悲しい。
あぁ、ほんの少しだけでも冷静さがほしい・・・

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2007年1月25日 (木)

今日は弱っているらしい

今日の仕事帰りに、ドラッグストアーに寄った。
その一角にある化粧品コーナーに行くつもりだったのだが、たまたま目に入った健康食品の陳列棚の前で足が止まる。
いつもなら見向きもしない、ウコンやら蜆エキスやらに目を奪われる。
あまり気にしていないと思っていたが、脳の一部分は体の事を気遣ってくれているらしい。
昨日は、しこたまアルコールを注入してしまった。
二日酔いにならない程度にはしたが、行き過ぎかもしれない。
明日も飲む予定だから。
「やっぱり、気ぃつけな・・・」 などと考えつつ、店を出て家路につく。

そして、もうすぐ家だという頃に気が付いた。
・・・化粧品コーナーに寄るの、忘れた。

本屋で脳トレーニング本コーナーから動けなくなる日は近い。

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2007年1月24日 (水)

彼女の韓国トラブルトラベル~誘拐!?編

彼女が壊れる前、そう、彼女がクラブに行く前の事。
伯父さんから、次の日の予定が皆に言い渡された。
「明日の晩行く店の場所、きっと皆分からんやろから、6時にロビーに集合して、一緒に行こう。 それまでは、自由行動。」

その当日。 彼女が真夜中に、知らぬ人の部屋へ押しかけた日だ。
約束の時間になっても、彼女は姿を見せなかった。
もう皆は集合している。
心配になった伯父さんと彼女の従兄が、彼女の部屋へ向かった。
何度呼んでも返事はない。
一度寝てしまうと何があっても起きないあの子の事だ。 まだ寝ているのかと思ったが、もう夕方である。
いくらなんでもおかしいだろうと、ホテルの人に事情を説明し、部屋のロックを解除してもらった。
そして部屋に踏み込んだ伯父さんの目に飛び込んできた光景は・・・
散らかされた衣類、乱れたベッド、つけっぱなしのテレビ。 どこを捜しても、肝心の彼女の姿はない。

伯父さんは後悔した。
韓国語をしゃべれない彼女を、一人でクラブに行かせてしまった事を。
もちろん皆、大騒ぎである。
露出度の高い、ピンクのチャイナ服を着ていたことも、心配の要因になっていた。
『誰かに連れ去られたのかもしれない』
そんな空気が重苦しくのしかかる。
打つ手もなく、時間だけが経っていく。
途方にくれる皆の心配がピークを過ぎる頃、彼女は元気な姿で発見されたのだ。
両手いっぱいに荷物を抱え、嬉しそうにホテルへ戻ってきた彼女。
「あっ、忘れてましたわ~。」
その一言で、誘拐騒ぎは幕を閉じたのである。
皆に、疲労感と脱力感だけを残して・・・

「朝からずっと市場にいたんっすよ~。 で、イロンナもん食べまくって・・・ 6食分くらい食べましたわ~。 おかげで焼肉あんまり食べれなかったんすよ! 最悪ですわぁ!!」
話を聞いている限りでは、彼女に反省の色はマッタクない。

まぁ無事に帰ってきて、こうやって土産話を聞かせてくれるだけで、よしとしよう。
とにかく無事でよかったよ・・・ 

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2007年1月22日 (月)

彼女の韓国トラブルトラベル~悪夢・・・編

午前三時・・・
ドンドンドンッ ドンドンドンドンッ
静かな夜に響き渡る音。
誰かがドアを激しく叩いている。
こんな時間に一体誰だろう。 ホテルの人か? 何かあったのだろうか。
恐る恐るドアスコープから表を窺い息を呑む。
そこにはヘラヘラと笑いながら、ドア越しに何かを訴える女が居た。
カナリきわどいスリットの入った、丈の短いピンクのチャイナ服を着たその女は、冬だというのに汗だくだった。
そしてドアスコープに向かい、何度も投げキッスをしていたかと思えば、今度は何処の国のものかもわからない、奇妙なダンスを踊り始めた。

しばらく様子を見ていたのだが、一向に帰る気配がない。
このままでは埒が明かないと思い、意を決してドアを開け、女に聞いた。

「どちら様ですか?」

彼女の頭の中は真っ白になった。
こちらが、どちら様ですか? と問いたい・・・
ドアを開けて出てきたのは伯母ではなく、流暢な韓国語を話す知らない女性だったのだ。
いったい何がどうなっているのだろう。
アルコールでグニャグニャになった脳が、答えを見つけるまでの30秒あまりを、無言のまま見つめ合う二人。

「間違えたっっっ!!!」
頭の掲示板に、大きくその言葉が貼りだされると同時に、彼女は走り出した。

戸惑い、怯える女性に言い訳など出来るはずもない。
彼女には、逃げる事しかできなかった。

その後、さすがの彼女も伯父さんと飲む事を諦め、一人寂しくクラブへ戻ったのだった。

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2007年1月21日 (日)

彼女の韓国トラブルトラベル~真夜中の不審者編

静まり返ったホテル内を、テンションを最高潮に保ったまま進む彼女。
しかし、15階でエレベーターを降りた彼女の足が止まる。
「・・・あれっ?」
忘れてしまったのだ。
どんなに頑張って思い出そうとしても、彼女の頭の中から伯父夫婦が泊まる部屋の番号が、消えてしまっている。
「何号室やったっけ・・・」
そうつぶやいたところで、誰も答えなど返してくれる訳もなく、一人ポツンと佇む彼女。
普通ならそこで、おとなしく引き返すだろうが、テンショの上がりきった彼女には、別の考えが浮かんでしまったのである。

「声、聞こえるかも~。」

なんと彼女は、一番近くのドアに耳を押し当てたのだ。
そして、端から順にそれを繰り返していく。

完全に不審者、変質者だ。
だが彼女は、伯父さんを連れてクラブに戻ることしか考えておらず、自分の行動を冷静に見つめる事が出来なくなっていた。
酒の力添えもあったとは言え、とんでもない行動をとったものである。
誰にも見られなくてよかったね、としか言いようがない。

真夜中の不審者と化した彼女は、いくつ目かのドアの前で、なんとも言えない達成感を味わった。
ドア越しに伯母さんの声を聞いたのだ。
「とうとう、たどり着いたっ!」

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2007年1月19日 (金)

彼女の韓国トラブルトラベル~迫る足音編

入場料を支払い、クラブに足を踏み入れた彼女は、ガクゼンとした。
そこにはクォンサンウ似の人はおろか、韓国人男性は数人しか居なかったのである。
そのクラブの人口のほとんどを、アメリカ人男性が占めていた。
そして数少ない韓国人男性は、彼女の希望とは大きくかけ離れており、夢は儚く韓国の夜に散ったのだ。

しかたなくアメリカ人男性を侍らせ、訳の分からぬ自作ダンスを踊りまくり、飲んでいた彼女の脳裏に、フと伯父さんの顔が浮かんだ。
「呼びに行ってこよ~。」
彼女は 「すぐ戻るから。」 と席を立ち、店を出ようとした。

そんな彼女の前に、クラブの韓国人店員が立ちはだかった。
彼は、「戻ってきたら、また入場料をもらいます。」 と、つたない日本語で彼女に告げたのだ。
彼女の怒りの導火線に火がついた。
そのクラブは、彼女達が宿泊しているホテルの地下にあり、5分もあれば伯父さんと共に戻ってこられるのだ。
そう何度も訴えたのだが、聞く耳を持たない彼に、とうとう彼女はブチ切れた。
「ふざけんなっっ! すぐ戻るゆーとーやろっっ! 何でまた金払わなアカンねんっっ! なめとんかぁーっっ!」
もちろん日本語で、それも関西弁で、そうまくしたてた。
だが、相手は片言の日本語しか解らない。

そこから互いの母国語で揉めだしたこの二人の間を、日本語を話せる店員が割って入った。
彼女はその店員と話し合い、再入場料を取らないとの約束を取り付ける事に成功したのである。
恐ろしい女だ・・・

そして時間の感覚をなくした彼女は、時計が夜中の3時を指している事も知らず、伯父夫婦の眠る15階スイートルームを目指しフラフラと歩いていった・・・

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2007年1月18日 (木)

彼女の韓国トラブルトラベル~嵐の前・・・編

長い休みが明け、両手に持った大きな荷物を振りながら、彼女が元気にやって来た。
楽しみにしていた韓国旅行を、思う存分満喫してきたのだろう。
沢山の土産を貰った私は、それを 「おぉっ!」 などと一通り楽しんだ後、旅行はどうだったのかと彼女に尋ねた。
「よかったっすよーーーっっ!」
とびきりの笑顔をし、大きな声で答えた彼女。
だが、私は知っている。 聞いている。
その韓国旅行で、彼女が起こした数々の事件を・・・

親族勢揃いの、韓国年越しツアー。

大人・子供を取り混ぜ、総勢15人の団体旅行だ。
自由人の彼女は大丈夫だろうか。 ちゃんとついて行けるのかと心配していたのだが、そんな私の思いをよそに、飛行機はしっかり一行を韓国に運んだのである。
恋いこがれ、思い続けた地へ降り立った彼女のテンションは、上がりに上がった。
だがそこは、伯父夫婦主催の親族旅行。
最初は大人しく、それなりに楽しんでいた。
しかし夜になり、皆でカジノに興じる頃になると、それまで眠らされていた本当の彼女が、ジワリジワリと顔を出す。

「クラブに行ってきますっ!」
言葉も通じぬ異国の地で、彼女は高らかに宣言した。
心配し止める皆を振り切り、大好きなクォンサンウ似の男性に出会うべく、一人クラブへ向かったのである。

明らかに発音のおかしい、
『今日は有り難うございました。』
その言葉だけをひっさげて・・・

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2007年1月17日 (水)

きつね

「きつね最高っすわ~っ! きつね、いいっすよ~っ!!」
いつも以上にテンションを上げた後輩が、店に入ってくるなり熱く叫ぶ。
「ふんふん。 で、何見たん?」
最初は驚いた彼女のそんな言動にも、いつの間にやらスッカリ慣れてしまったようだ。 私はいつものように話の先を促した。
「見たいビデオあったから借りて帰ったんっすよ~。 で、そん時に 『きつね』 のが、たまたま目に入ったから一緒に借りて帰ったんっすわ・・・ も~ぉ号泣しましたわ~!号泣ですよっっ!」
動物好きの彼女の事だ。 きっと普通の人以上に、のめり込んでしまったのだろう。
しかし、そんなにも号泣してしまう映画とは何だろう。

気になって彼女に尋ねてみたところ、
「タイトルなんて覚えてませんわ~。」
と、実にあっさりとした答えを返されてしまった。
昨日見たばかりだろうに。 本当に心を打たれたのだろうか。 少しばかり疑問に思う。

迷宮入りになってしまうのかと思われたその 『きつね』 だったが、彼女の 「体の悪いきつねと男の子の話なんですわ。」 の言葉で解った。
どうやら彼女は 『子ぎつねヘレン』 の事を言っているらしい。
「子ぎつねヘレンちゃうん?」
確認の為に聞いてみると 「そう! それっすわ~! ヘレンですわ~!」 と笑っていた。
思い出してもらえてよかったな、ヘレン。
「でね~、そのきつねがパタッて倒れてるシーンでね、もぉ号泣なんですって~っ! かわいそうで、かわいそうで・・・ もうだめっすわ~っ!」
また思い出したのか、彼女は興奮している。

思いだしついでに、きつねじゃなくて 『ヘレン』 と呼んでやれよ・・・
まぁ、それだけ感動したということか。 さっきは疑って悪かったなぁ。 などと一人反省する私の耳に、一段と高くなった後輩の声が響く。
「きつねがジッと倒れてるんですよっ! 動かないんですよっ! もしかしたらアノ子・・・ 麻酔打たれて眠らされたんかもしれないんっすよっっ!! ・・・あんな小さい子が、命張らされて頑張らされてるなんてっ! かわいそすぎて、号泣ですよーっっ!!!」 
「・・・そこかーーーーーーーーーいっっっっ!!!!」

どうやら彼女には、ストーリーなど関係なかったようだ。
脱力している私に、
「まぁ、『大沢たかお』 見たさに借りただけなんっすけどね~」
そう言い残し、風のように走り去った彼女には、『きつね』 も あまり関係なかったようである。

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2007年1月16日 (火)

悲しい鶯

「もう二度と、こんな物買って来るなっっ!」
ワナワナと震えていた父が、カッと目を見開きそう怒鳴ったのは、忘れもしない、私が小学2年生だった、ある日曜日の事だ。
いつの頃からか私の家では、休みの日の夕方は、家族揃ってお茶を飲みながら菓子をつまむという、習慣のようなものがあった。
そしてその日も例に漏れず、皆でのんびりと過ごしていた。

本当に穏やかな時間だったのだが、それを一変させたのは、まだ幼かった弟である。
彼は小さな指でつまみ上げた、その日のおやつ 『鶯ボール』 を、そーっと父の顔の横に並べ、無邪気な笑顔で言ったのだ。

「お父さんに、ソックリー!」
・・・全てが止まった。
その凍てつく空気を打ち破ったのが、冒頭にある父の怒鳴り声である。
父は母を睨みつけ、

「これ、捨てとけっっ!」
と、また怒鳴った。
完璧な、八つ当たりだ。
そう言われた母は、黙って台所のゴミ箱へ向かい、鶯ボールを捨てる振りをし、食器棚の奥へコッソリ隠した。
そして、家を飛び出す怒りに満ちた背中を見送った後、皆で美味しく食べたのだった。
その日を境に、我が家から鶯ボールが消えたのである。

あの頃の父は、日に日に寂しくなる頭を気にしていた。
まだ30代前半だった事を考えると、無理もない。
そんな心の傷に、いくら可愛い息子とは言え、触れる事は許せなかったのだろう。
そんな父だったが、今では自分の頭をかなり気に入っているらしく、短く刈りあげ、ご満悦だ。
その上、 「かみそりで剃ってもエェか?」 などと言い出し、母を呆れさせている。
そして、薄くなった頭を気にし、帽子で隠す友人に、
「何で隠すねん。 そんなん気にするなんて、ちっさい男やなぁ。」 
なんて言葉まで、吐けるようになったのだ。
私達から鶯ボールを奪ったあの頃とは、えらい違いである。

もう鶯ボールを家に連れ帰っても、文句は言われまい。

だが、そう思った矢先に父の病気が発覚し、母の手により家から菓子類が撤去されたのだ。

鶯ボールは、未だ我が家の敷居を跨げずにいる。

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タマキさん

後輩が聞いてきた。
「好みのタイプって、どんなんっすか? どんな人が好きなんっすか?」 と。
以前にも何度か聞かれたことがあるのだが、覚えていないのだろうか。
で、いつもと答えを変えてみた。
「今、気になるのは、玉木宏。」

・・・静かだ。 静か過ぎる。
後輩の方を振り返ると、彼女は一点を見つめ固まっている。
どうしたのだろうか。 心配になり声をかけた。
「どないしたん? 玉木君やで、タマキ君。」
すると彼女は、小さな小さな声で言うのだ。
「・・・声、いいですもんね。」
彼女らしからぬ、その態度。 私はますます心配になった。
どこか具合でも悪いのだろうか。
「うん。 あの低く響く声も好い。」
そう答えながらも、彼女の顔色などを密かにチェックしたのだが、どこも変わったところは無い。
でも、彼女の態度はおかしい。 
私と目を合わそうともしないのだ。

絶対に、おかしい。
また黙りこくり動かなくなっていた後輩が、何かを吹っ切ったように顔を上げ、クルッとコチラを向いた。
「タマキヒロシって、ヤ・・・何とかヒロコと結婚してた人ですよね。」
「・・・・・」
今度は私が固まった。 
そんな私を心配そうに見ている後輩。
「違いましたっけ?」
首を傾げる彼女に笑いがこみ上げる。
「薬師丸さんと結婚してたタマキさんはコウジさんであって、ヒロシさんではありませんっっ! なんで、今、気になる人でコウジさんが出てくるかねぇ。」
その言葉に、彼女は大笑いしながら言った。
「いや~、勘違いっすわ~。 エッライ渋いトコついてきたなぁって思って! どんな反応したらエェんか困りましたわ~!」

彼女の固まっていた理由はソレだったのだ。

心配に費やしてしまった私の時間を返して欲しい。     まぁ、何もなくてよかったのだが、1つ良くないことがある。 私は彼女を呼び、玉木宏プロフィールを見せた。
ちゃんと解ってもらわねば、私の心配も後輩の気遣いも、全部無駄になってしまう。
彼女はパソコンの画面に顔を近づけ、真剣だ。
「なかなか、いいですね~。」
よしっ。 もう大丈夫だ。
一仕事終えた気分になっている私に、後輩がニッコリ笑いかける。
「でもやっぱ、クォンサンウには勝てません。」
その一言をきっかけに、彼女は違う世界への扉を開け、旅立ってしまったようだ。
私はニヤケ顔のまま固まる彼女を、静かに見ていた。

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2007年1月14日 (日)

睡魔の正体

睡魔に襲われていた昼過ぎ、1通のメールが届いた。
その直前までメールをしていた女友達だろうかと、半分気を失いながらも開いてみた。
『私、3日エッチしないと嫌なの』

・・・そんなん知るかぁぁぁっ!!!

友人からではない。 迷惑な誘惑メールである。
その時思い出した。
草木も眠る丑三つ時に、違うバージョンのメールで起こされた事を。
 
 あぁっも~っっ!! 
 睡魔 = お前かいっ!! 
 そのストーリーは、一体誰が考えとんねん!
 うそ丸出しの内容を、
どーにかせぇよ! 
 もし本気メールなら自己解決せんかいっ! 
 ウガァァ!!!

怒りのパワーで睡魔に打ち勝ち、何とか今に至るものの、もう限界である・・・
今日はさっさと眠る事にしよう。

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2007年1月13日 (土)

大激突!

店に足を踏み入れてから約五分後の激突を、誰が予想しただろう。 
きっと誰もしていない。 本人ですら考えもしなかったのだから・・・

いつもと変わらぬ朝にそれは起こった。
シャッターを半分上げ、店に体を滑り込ませたその時、悲劇の幕は開いたのだ。
いつものように警報装置を止め、振り向いた私の視線の先に チャバ...チャバネゴキブリ!
「ウゴッ!」
固まった。私は固まった。そしてチャバも固まった。
しかしノンビリ見つめ合っている訳にはいかない。
わたしはヤツから視線をはなさないように横歩きで店の奥まで移動した。
そう、そこには毒ガス...いや、殺虫剤があるのだ。
そいつをガッシと握り締めヤツに戦いを挑んだ。  結果はやはり殺虫剤。
ヤツは「ポサッ」と音を立て力尽きた。のかどうかは解らない。確認できなかったのだ。
とにかく一刻も早くここから逃げなければと思い、急いでセットを済ませた。そして入り口を睨む。

ヤツはその付近にいる筈なのだ。
だが勇気を振り絞り、明るい光の差し込むほうへ、いざ脱出!

『ガッシャーンッ』
・・・忘れていた。
シャッターを半分しか開けていない事をスッカリ忘れていた。
思いっきり派手に大激突。
シャッターの一番下の平たくなった部分を水平にくらったのだ。
しかも眼球をクルリと囲む骨と瞼のちょうど境目に。
今度は声も出なかった。
そしてチャバも気にならなかった。
慌てて店に戻り鏡で左目と瞼をチェックしたのだが、出血等は認められなかった。
とりあえず一安心だが、カナリの痛みである。

大激突。
自分でも厭きれてしまうほどの情けない出来事のせいか、直後から右のこめかみに激痛が...
左目を冷やし、右こめかみを押さえながら悲しい一日が終わろうとしている。

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ストーカー

ストーカーという言葉がよく聞かれるようになった頃、私は暇だった。
毎日仕事に行っていたのだが、それほど忙しくはなかったのである。
職場の先輩達に、する事はないかと訊ねても
「今は大丈夫。 本でも読んどき~。」
と、いわれてしまう。
そんな状態だったので、私は毎日色々な本を読み漁っていた。
そしてある日コンビニで、ストーカーを題材にした数々の本に出合ったのだ。
その中で私が興味を持ったのは、本当にあったストーカー話だった。
想像のストーカーより、本物のストーカーが、どういうものかを見たくなったのだ。

迷わず買い求め読んでみたのだが、どうしてこんな事になるのだろうかと、自分の知らない世界にただただ驚いた。
そして読み進めていくうちに、1つの話に辿りついた。

その内容は・・・
男性が友人に女性を紹介されたのだが、男性はその女性から、ある相談をされる。 
男性は 「だったら調べて、連絡しますよ。」 と言い、彼女も 「お願いします。」 と言ってその日は別れた。
そして後日、男性は約束通り女性に電話をした。 だが、彼女は出ない。
心配になった男性は、女性の家を訪ねたり、何とか連絡を取ろうとするのだが・・・

それを読んで 「ん?」 となった。
これはストーカーとは関係のない、親切な男性の話じゃないか。
そうか、今からこの女性がストーカーになるんだな。
などと思っていたのだが、話はそのまま終わってしまった。

「あれっ?」 と思いながらページを戻り、よくよく見てみると、なんとこの男性こそがストーカーだったのだ。
それを知った瞬間、私は軽く失神した。
そう、私はその時まで、ストーカー男に共感していたのだ。 私はストーカーに遭う心配より、ストーカーにならないように気をつけなければいけないのか。

その後、改めて読み返し、男がストーカーであることをしっかり理解した。
だが、たとえ一度とは言え、
「せっかく心配して連絡してくれているのに、電話にも出ないなんて、ひどい女だ。」
などと思ってしまった事実は、消えないのである。

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2007年1月12日 (金)

彼女の疑問~タケノコ編

さてさて、彼女の椎茸に関する疑問も解け、めでたしめでたしで幕が下りると思いきや、話は意外な方向へ勢いよく転がっていったのだった。

「椎茸って、キノコやったんっすね~。」
そうご機嫌に話す後輩の口から、またしてもとんでもない言葉が飛び出したのである。
「タケノコも、キノコっすよね~。」
「違う! 筍は竹の子。 キノコちゃうで!」
もしかすると、タケノコ・キノコ、『ノコ』 つながりで同じだと思ったのかもしれない。
だが、明らかに間違っている。
私はキッパリと答えを言い渡したのだが、彼女は混乱しだした。

「じゃあ、タケノコは何モンなんっすかぁ?」

「・・・タケノコは名前の通り、竹の子。 竹、知ってるやろ? それやん。」
「はぁぁぁ~? 竹ってアノ竹っすか? あの硬そうなヤツっしょぉ? それは嘘ですわーっ! 絶対ないですってーっ!」
丁寧に答えた私に、彼女はそんな言葉を返してきた。
椎茸のことに続き、またしても私の信用の無さが窺える。
日頃の行いが、そんなにも善くないのだろうか・・・
「嘘ちゃうって! タケノコが大きくなったら竹になるねん。 そんならタケノコで検索してみぃ。」

インターネットは便利だ。
アッと言う間に、私への2回目の疑いは晴れた。
「ホンマっすわーっ! 全然知りませんでしたわ~。 何で、そんなん知ってるんですかぁ? 凄いっすね~!」
別に、そんな称賛される事でもないのだが。
まぁ、解ってくれたのならいいかぁ。 などと思いつつ、まだパソコンの画面をジッと見ている彼女に、小さな夢を打ち明けた。
「私なぁ、一回でいいから 『筍の刺身』 食べてみたいねん。」
それを聞いた彼女は、ガバッと私を振り返り、
「何言うとんっすか! あんなアクの強いもん、刺身になんか出来る訳ないっしょっ!」

と、言い放った。
「採れたては刺身で食べられるのっ!」
そこから、食べられる、無理。 嘘、嘘じゃない。と言い合いになったのだが、やはりインターネットは凄かった。
「ホンマっすわ~。」
どうやら、私に対する3度目の疑いも晴れたようだ。

椎茸と筍・・・
こんな風に話題に上ることになるなんて、きっと思ってもみなかっただろう。

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2007年1月10日 (水)

彼女の疑問~椎茸編

「シイタケって何モンですかぁ?」

仕事中にそんな問いを繰り出したのは、可愛い後輩である。
「何モンって・・・ 椎茸やん。」
私の答えともいえない言葉に、
「シイタケは、シイタケっすか? シイタケ以外の何モンでもないって事っすか?」
と、何やら同じ所をグルグル回っているふうな彼女。
そんな彼女に、
「椎茸は椎茸。 キノコやん。」
と、再度答えたのだが、とんでもないセリフが返ってきた。 「シイタケってキノコなんっすかっ!? ホンマっすかぁ? キノコって山に生えるんっすよ! キノコって毒キノコとかそんなんでしょ? あぁ~っ、嘘ついてるんでしょ~。」
まさか、そんなことで疑われるとは。

どうやら私は、まったく信用の無い人間らしい。
椎茸に気付かされてしまうなんて、何だか切ない。

あまりにも彼女が疑うので、言ってあげた。
「椎茸のタケっていう漢字はキノコでしょ。 それからエノキもシメジもマイタケも、みんなキノコ! ネットで調べてみぃ。」
しばらくして何とか納得した後輩に、キノコのCMで流れていた歌を歌ってあげた。
きのこっの~このこ というやつだ。
すると彼女は 「えりん~ぎ まいたけ ぶなしめじ」 と、続きを歌ってのけた。
「・・・毒キノコ以外のキノコ、知ってるやん。 今、歌ってたやん!」

私が突っ込むと、
「あれっ?・・・ホンマっすね~! 知ってましたわ~。」
と、今度は心底納得し、笑っていた。

よかったね。 1つ賢くなったね。
私への疑いも晴れたことだし、よかったよかった。
だがこの直後、さらなる疑いを掛けられる事になるなんて、思ってもみなかった・・・
                 ☆明日へ続く☆

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2007年1月 9日 (火)

ある秋の日の恐怖体験

それは見事な秋晴れの朝。

いつものように高い空に浮かぶ雲を見上げながら、ヨロヨロホロホロ駅へ向かっていた。
「おぉウロコみたい~。そういや全然釣りに行ってないなぁ...今の時期は何がいいんかなぁ~」 
などと考えながら歩いていたのだが、ふと気が付くと要注意スポットに差し掛かろうとしていた。
そこは、うっそうと草木が生い茂る斜面を見下ろす場所なのだ。

勿論、頑丈な柵はある。 しかし人間は通れないが小さな生物達は自由に出入りする事が出来るのだ。
そう、色鮮やかなトカゲ達...
急に飛び出してくる彼らに 「にょーっ!!」 などと訳の解らぬ叫び声を発し、不審気な眼差しを向けられる事数回。 気を付けるに越した事はない。
で、注意深く下を確認しながら歩いていた私の視線の片隅をチラリとかすめたものがあった。
それはトカゲではなく・・・ 伸び放題の草むらに埋もれるヒトカゲ!!

「ヒッ!」
短く息を飲み固まりかけた私だったが、好奇心の虫が騒ぎ出し、エイッと草むらへ視線を戻した。

グレーの人影... おじいさんだ。
薄いグレーの服を着たジイサンだったのだ。
一気に冷めた私はマジマジと彼を観察し始めた。
右手には傘を、左手には釣り用バケツ。
なんなのだ。そのいでたちは。
彼は悩む私の姿など眼中にないらしく、ボンヤリ空を見上げている。
その視線をたどった時、全ての謎が解けた。
柿だ。
ジイサンの視線の先には、自生し大きく育った柿が青い実をつけていたのだ。
間違いない。
彼は傘で柿の枝を引き寄せ、もぎ取り、そしてバケツに入れ持ち帰
ろうとしているのだ。

全てが解ればもう興味はない。
そしてもう時間もない。
小走りで駅へ急ぎながらも心の中で延々とジイサンに突っ込み続けた。
「頼むから、もっと爽やかに採ってくれよっ!! ホンマ怖いねんっっ!!」

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2007年1月 8日 (月)

嫌な気分

ムカツク奴がいる。
ギュッと結んだ堪忍袋の緒も もうすぐ切れるだろう。
フと気が付くと 「どうしてやろうか」 と策を練っている自分がいる。
思わず苦笑い。
頭を振り、つまらない考えを追い払おうとするが、無駄なようだ。
楽しい事を書こうと思うのだが、頭の中・・いや、体中がその事でいっぱいになっている。
なんだか今日一日、損した気分だ。

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2007年1月 7日 (日)

昼下がりの教訓

休みの日は朝寝を楽しむ私である。
今日の起床、AM10:23。
ボンヤリしながら、朝ごはんの準備を始める。
そんな娘に関係なく淡々と家事をこなす母は、午前最後の仕事 『買出し』 に出かけるトコロであった。

その後を、私と同じく休日の父が 「ちょっと待てや~」 と追いかける。 
仲の良いことだ。などと思いながらご飯を食べ、片づけを終えた時、二人が連れ立って帰ってきた。

「雨が降ってきてな~」

買った品物を仕舞った後、3人で仲良く紅茶を飲みながら話をしていたのだが、母の声がふいに止まった。 そして次に出た言葉が、
「お父さん、なんで首振っとん?」
最近父はよく首を振る。
たとえばソレは、洋画でよく見かける(?)
「お~ぉ、俺様にはまったく理解できないぜ~」の時のリアクションのような感じである。

自分の話の最中にやられれば、そりゃ聞きたくもなるだろう。
そんな問いに、テレビを見ていた父は母に背を向けたまま答えた。

「耳の奥がコロコロしとーねん。」
「じゃぁ、目薬点せばえぇやん。」
「・・・・・・・・・・・・・・」

目薬・・・母の言葉に父と私は、しばし無言であった。
が、満面の笑みを浮かべた父が沈黙を破る。
「お前は耳に目薬さすんかいっっ!」
しばらくそのやり取りに爆笑していたのだが、再び紅茶を手に話の続きを始めようとする母と私の間を、父の声が割り込んだ。
「耳がコロコロしとーのに、なんで目薬やねんっ!」

「またかっ」 心の中で私は叫んだ。
その心の叫び声に母の声が重なる。

「聞き間違えただけでしょーがっ! 何回もしつこいなっ!」
それでもまだニヤケ顔でからみ続ける父に、とうとう母がキレた。
「もう顔も見たくない!」
そして自室に向かうため立ち上がり部屋を出ようとした母は、振り向きもせず言葉をはき捨てた。
「昼ごはん、自分で勝手にして食べて。 もう私、知りませんからっ!」

聞き間違えの答え間違いは誰にでもある。
 
それにツッコミを入れるのは、愛情である。
だがそれは、引き際を誤るとこのように喧嘩を惹き起こすものなのだ。
そして、罪無き可愛い娘のお昼ご飯にも影響を及ぼす恐ろしいものでもある。

『引き際を大切に』
悲しい昼下がりの教訓である。

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2007年1月 6日 (土)

アブラ

「食用油って、どうやって作ってるか知ってますぅ?」
今日の夕方、「サラダ油が高くなる」 というニュースを見た時に、ふと思い出した、ある日の後輩の言葉である。

聞かれた私は、
「菜種とか搾って、つくるんやろ?」

と答えたのだが、彼女は静かに首を振った。
そして、自信に満ち溢れた表情でこう言ったのだ。
「それもありますけど・・・ アブラムシですよ。 アブラムシ搾ってるんです。」
「・・・それは無いわーっ! そんなん誰に聞いたん!? 絶対ないって! ありえへんっ!」
もちろん私は全力で否定したのだが、珍しく彼女は一歩も譲らない。
「ホンマですってっ! 私、昔、何かで見ましたもんっっ!」 彼女も全力で向かってくる。

ハッキリそう言いきられた私は、彼女を説き伏せるだけの知識が無い事も手伝い、 「美味しかったらえーやん。」 とか何とか言いながら、引き下がざるをえなかった。

そして、その言葉を思い出してしまった今日、サラダ油とアブラムシの事を調べるべく、パソコンにむかったのだ。

食用油の原料や、産地、ドレッシングの作り方。
アブラムシの種類や、種類別の退治方法、そして生態まで、拡大写真にめげそうになりながらも、隅々まで読んだ。

そして、解ったのだ。
そんな話は何処にも無い! ということが。
ちゃんと調べたが、そんな事はマッタク書かれていなかった。
これだけの資料があれば、後輩は納得してくれるだろうか。
もしそれでも駄目なら、食用油の生産者に電話をして聞くしかないだろう。

とにかくアブラの件はコレ位にして、会社に忘れず牛乳を買って行こうとメモを取る。

可愛い鉢植え達のために。
アブラムシには、薄めた牛乳の散布が効果的と書いてあったから。
そして残った牛乳は、可愛い後輩に飲んでもらおう。
彼女はカフェオレ好きだったはずだから

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タケノコ

ある日の事。
いつもの時間に いつもの道を いつものように会社へ向かうため歩いていた。 しかしその朝は、いつもと違うコトがあったのだ。

通勤ラッシュを過ぎた時間帯。
駅に向かう人の数はグンと減っている。
その日もホロホロキョロキョロ歩く私の耳に、甲高い声が飛び込んできた。

「そうよ! そうなのよっ! これはタケノコよっ!」
携帯電話で話しながら歩いてるんだと思っていた私は 『タケノコ』 に反応し、前を行く女性に目を向けた。
彼女は、親指と人差し指で何かをつまんだ右手を目の高さまで持ち上げ、必死に自分に言い聞かせている。
「そう! これはタケノコ! タケノコ!!」
あまりにも必死な彼女を見ているうちに、私の好奇心のムシが騒ぎ出してきた。
  そしてこらえきれなくなり、追い越し際に彼女の右手を覗き込んだのだ。 
いよいよ私の目に 『タケノコ』 が映る!
・・・はずだったのだが、残念ながら力を込めた彼女の指には何もなかった。

どうやらそのタケノコは、彼女にしか見えない幻のタケノコだったようだ。
ガッカリしながら歩く私。
その時、背後から悲痛な叫び声が!
「私のタケノコはドコッ!? どこに行ったのっ!? さっきまであったのに!! 私の大事なタケノコがっ!! 誰の仕業なのっ!!?」

泣きそうな彼女の声を背に、早足で駅に向かったことは言うまでもない。

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2007年1月 5日 (金)

父の探し物

晩御飯を食べていた父が突然言った。
「昔の写真どこにある?思い出してくれ。」 と・・・
トウモロコシに齧りついていた私と母は 「はぁ??」 としか言えなかった。
理由を聞いても決して口を割ろうともせず 「写真、写真」 と繰り返す父。
あまりのシツコサに渋々腰を上げる母。
相変わらずトウモロコシをかじりながら 「なぁ、何で?なんで??ナンデーー???」 と好奇心むき出しの娘。
そんな娘を無視して箸を動かし続けていた父の後ろから、  「どーせ昔の彼女との思い出にでも浸りたいんやろ。」 と仁王立ちの母が言い捨てる。

「向こうにあったわ。」 そう言って部屋を移動する母の後ろを 「そんなんちゃうって~」 と喜び勇んで父が続く。 
興味を失った娘は一人、部屋でタバコを吸っていたのだが・・・
「おぉい!ちょぉ来てみぃ!!」 隣の部屋から私を呼ぶ叫び声がする。

ため息を吐きつつ行ってみると、そこには満面の笑みを浮かべた父がアルバムを片手に待ち構えていた。
そして1枚の写真を指差しながら言ったのだ。
「ほれ見てみぃ!昔はこんなに毛ぇあってんで~!!」

・・・だからなんやねーーん!!!

どうやら父が探していたのは昔の彼女でも、若かりし頃の嫁でも、もちろん可愛い盛りの子供でもなく、毛のある自分。それだけだったようだ。

早く寝たいという嫁の願いを蹴散らし 「これはまだ、お前と付き合う前やでぇ」 などと、未だ思い出話に花を咲かせている父。

探し物見つかってヨカッタやん・・・

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2007年1月 4日 (木)

考える

正月早々、これからの私について考えた。
このままじゃイカンと思ったのだ。
何から始めようかと悩んでみる。

まずは、禁酒。
ちょっと酒をやめようかと考える。

飲みたい。 飲みたいのだが、先にちゃんと体を治す事にしようかと思う。
昨年から具合が悪いと解っていながら、ごまかし続けてきたのだが、どうやら限界のようだ。
また数年前のように、飲めず・食えずになるのは嫌なので、真剣に考えたほうが良いだろう。
・・・いや、やっぱり減酒にしようか。

そして、体力づくり。

あまりにも遠ざかり過ぎ、最近では脳内辞書から抹消されてしまった 『運動』 という2文字を、もう一度登録し直さなければ大変な事になりそうなのだ。
こちらは早めに、何とかしなければ。
・・・しかし、何をすればいいのだろう。

最後に、恋。

・・・は、まぁ気が向けば。 という事で。

とにかく今年は
『自分を大切に』
それを胸に生きていこう。
それよりも、もっと決断力と行動力のある人間になる事の方が先かもしれない。

今日もアルコール浸けのトロケタ脳みそで、ボンヤリそんなコトを考えてみた。

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2007年1月 2日 (火)

中吉

昨日は初詣に行ってきた。
毎年のように、心で大いに突っ込みながらも、おみくじを引いてみる。
そう、以前にも書いたが問題は 『待ち人』 である。
今年の待ち人・・・

『来ますが遅くなります』

また、遅くなるらしい。
まぁ12ヶ月もあるので、気長に行くとしよう。
それより気になるのが、旅行である。
『悪いです。 中止したほうがいいでしょう』

・・・はっきり言われてしまった。
今年は旅に行こうと思っていたのに、なんてこった・・・
さらに、失物はもっとキッパリしている。
『出ません。 あきらめることです』
・・・諦められないから探すんですが。

今年は何事にも注意をしながら、静かに生きていこうか。

争事 『短気をおこさず人にまかせなさい』
静かに静か~に、裏で手をまわしながら。

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