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2007年1月 6日 (土)

タケノコ

ある日の事。
いつもの時間に いつもの道を いつものように会社へ向かうため歩いていた。 しかしその朝は、いつもと違うコトがあったのだ。

通勤ラッシュを過ぎた時間帯。
駅に向かう人の数はグンと減っている。
その日もホロホロキョロキョロ歩く私の耳に、甲高い声が飛び込んできた。

「そうよ! そうなのよっ! これはタケノコよっ!」
携帯電話で話しながら歩いてるんだと思っていた私は 『タケノコ』 に反応し、前を行く女性に目を向けた。
彼女は、親指と人差し指で何かをつまんだ右手を目の高さまで持ち上げ、必死に自分に言い聞かせている。
「そう! これはタケノコ! タケノコ!!」
あまりにも必死な彼女を見ているうちに、私の好奇心のムシが騒ぎ出してきた。
  そしてこらえきれなくなり、追い越し際に彼女の右手を覗き込んだのだ。 
いよいよ私の目に 『タケノコ』 が映る!
・・・はずだったのだが、残念ながら力を込めた彼女の指には何もなかった。

どうやらそのタケノコは、彼女にしか見えない幻のタケノコだったようだ。
ガッカリしながら歩く私。
その時、背後から悲痛な叫び声が!
「私のタケノコはドコッ!? どこに行ったのっ!? さっきまであったのに!! 私の大事なタケノコがっ!! 誰の仕業なのっ!!?」

泣きそうな彼女の声を背に、早足で駅に向かったことは言うまでもない。

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